日常でも使いたい カッコイイ茶道具たち

竹松歩さんは、象嵌を得意とする金工作家です。

「工芸品は使うもの」という思いで作られる作家の作品は、常に使う場面を想像して作られています。

茶道人口の多い金沢で、茶道具を手掛けているのもそのためです。“懐紙にはさめる銀の菓子楊枝”は茶道を嗜む作者が何本もの菓子切りを失くした結果、なくならない菓子切りが欲しいと考えて生まれたものです。

また、兎の意匠が愛らしい“黒味銅象嵌香合 真向兎(まむきうさぎ)”は香合の裏におしりの大きな兎の後ろ姿をこっそり象嵌するなど、手に取った時にクスリと笑ってしまうものもあります。

創作の原点は 使い勝手とカッコよさ

金、銀、銅、錫、鉄のいわゆる「五金」や、それらの合金を素材にして作る金工には、様々な技法があります。作者がその中で特に素材に異種の金属を嵌め込む「象嵌」を好んで作るのは、シンプルに、これが金沢の伝統工芸だったからです。工芸品は使うためのものという思いで、使い勝手の良さを考え形やサイズを考えることから作家のものづくりがスタートします。

決して気負わず自分が使ってみたいと思うものを作り、それを買ってくれた方が楽しんでくれて「使いやすい」と言われるのがうれしい。これが作者の創作の原点です。

作品を手にした人が、長く使って金属の経年変化も楽しんで欲しいという思いで、丁寧なものづくりをしています。

平成23年(2011年)にはFENDI(伊)が行っている『手仕事を未来に伝える』プロジェクトに参加。加賀象嵌でFENDIの革職人とのコラボも行いました。

自分の金工技術を使って、面白いと感じることであればなんでも挑戦したいと語る作家の作品には、デザインの面白さと、使う人に対する温かな思いが込められています。

<プロフィール>
金沢市生まれ
2003 国立高岡短期大学産業造形専攻科(現・富山大学芸術文化学部)卒業/在学中は鋳金を専攻。
2005 工房セーブルにて作品制作開始/坂井貂聖氏の指導の元、加賀象嵌の技術習得・作品制作を始める。
2006 兼六園大茶会展初出品・入選/以降毎年同展に出品し、入選・入賞。
2011 『FATTO A MANO FOR HE FUTURE』イタリアのファッションブランド、FENDIが行っている『手仕事を未来に伝える』プロジェクトに坂井貂聖氏と参加。売り上げはFENDIより世界子供基金を通じて東日本大震災の復興に寄付された。
2012 石川県伝統工芸展出品・入賞
2013 世界工芸コンペティション‐茶の時空間- 入賞
2014 富山アートアワード 準グランプリ/ 古代からの技に魅せられて セーブル展/金沢市工芸展・石川県伝統工芸展へ出品入選
2015 アートフェア東京にGALLARY KUGOより出品